こんな方におすすめ
- アメリカでプログラマーになりたいけど勇気が出ない
- アメリカでIT会社で働きたいけど実際やっていけるのか不安
アメリカでプログラマになることを漠然と思い描いている方いらっしゃると思います。今回はアメリカで12年間システムエンジニアとして働いている私が知りうる限りの情報をご提供差し上げたいと思います。
わたしのスペック
- 得意な言語:C#, PHP,Javascript
- データベース:MySQL, SQL Server, Oracle, DB2
- 言語, DB以外の技術:HTML, CSS
- 経験のあるサーバOS:Windows Server, LInux (CentOS)
- 語学:TOEIC 850点(渡米時500点)
アメリカでプログラマになりたい理由は様々だと思います。純粋に高い技術を学びたいという人もいれば、漠然と英語を使って仕事をしたいという人もいると思います。あとはアメリカのソフトウェアエンジニアの給与に魅力を感じている人もいるでしょう。
これからアメリカで12年間エンジニアをやってきて感じたことを書いていきますが、まず最初に言わせてください。(アメリカでは結論が先。鉄則です。)
ソフトウェアエンジニア、プログラマ、システムエンジニアは絶対にアメリカで働くべきです。
では理由を書いていきます。
給与ってどうなの?
日本に比べて高いです。アメリカにはGlassdoorというサービスがあります。これは実際に働いている人が自分の給与や実態について暴露しているサイトなのですが、給与の高さに驚かれるのではないでしょうか。
地域にもよりますが、シリコンバレー、サンフランシスコエリアだと新卒でも年収1000万円とかざらです。なんたって何の戦力にもならないインターンが年収ベースで700万円とかありますからね。
ただこの地域は生活コストもめちゃ高いので年収1000万は決していい生活はできません。わたしの会社がシリコンバレーのマンションを一室借りていますが、日本でいうところの2LDKの家賃は$4,000です。日本円で約40万。
これでは年収1000万でも全く贅沢できません。
私はカリフォルニアの別の地域なので平均給与はシリコンバレー、サンフランシスコエリアよりは落ちますが生活コストが断然安いです。安いと言ってもカリフォルニアは全米でも高い部類にはいるのでだいたい東京と同じくらいと考えて頂ければよいと思います。
先に挙げた私のスペックで日本で働いた場合を考えると、おそらく1.5倍くらい高いお給料をもらっていると思います。ちなみに私は駐在ではありません。現地採用です。
それはエンジニアの地位が日本よりも高いからだと思います。日本の場合、なろうと思えば誰でもシステムエンジニア、プログラマーとして働くことができます。しかしアメリカでは大学でコンピューターサイエンス学科を卒業していないとほぼ不可能です。敷居が高い=地位が高いということです。
日系システム会社であれば経験年数により入ることができます。現に私はバリバリの文系、商学部卒ですが日本でのエンジニア経験が8年ほどあったので運よく潜り込むことができました。
米系でも中途採用で、かつそれなりの経験があればもしかすると入れるかもしれませんが、日本でエンジニア職を探すよりは難しいと思ったほうがよいです。
ちなみにコンピュータサイエンス学科卒業以外の学生が新卒でエンジニアとして就職するのは私の知る限りほぼ無理です。アメリカって優秀な人はとっても優秀なのですが、ダメな人はほんとにダメです。
日本のように全国民がほぼアベレージ以上である国じゃないので、目に見える指標、この場合コンピュータサイエンス学科卒業というふるいでまず一次審査をしないととんでもない人材がやってくるからだと思います。
プログラミング言語別の平均給与の記事を書きました。
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【言語別】アメリカのプログラマの年収は?1位はやはりあの言語!
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労働時間ってどうなの?
日本と比べると格段に短いです。特に米系は定時になったら一瞬でみんな帰ります。日系ですら定時後2時間もしたらオフィスに誰もいなくなります。
日本では大手SIerと大手インターネットサービス会社の2社で8年ほど働きましたが、だいたい月平均で40~80時間は残業していました。平日は夜11時になっても半分くらい社員が残っていることなんてざらでした。皆さんの会社もこんな感じじゃないでしょうか? (働き方改革で改善されていることを願います!)
アメリカは契約社会です。入社時の就労要綱に9時~18時までの勤務と書いてあったら、よっぽどのことがない限りこれが守られます。残業することを強制しようものなら下手したら訴えられます。いや、下手しなくても訴えられます。
また、全ての工程が合理的に進むため、同じ成果を上げるのに必要な時間が日本よりも少ないです。(例:必要な文書、打ち合わせ回数)
終わりません(笑 。 ちょっと語弊がありますね。そもそも日本のように仕様が増えてもスケジュールも見積もりも変わらないとか、仕様が決まっていないのに見積もらせられる なんていう摩訶不思議なことは起こりません。
契約書でがちがちにスコープが決まっています。なので不測の事態が起きたらすぐにリスケ、再見積もりの対象となります。
注意すべきはそれを悪用する人たち。本当は自分のせいなのに、終わらない理由を当たり前のように並び立ててくる輩もいます。そして彼らはアグレッシブです。あれ?自分が悪いのかな?とさえ思ってしまうほどに。
有給ってとれるの?
とれます。有給は権利です。働き方改革によって日本でもだいぶましになったと思いますが、私が日本で働いていたころはIT会社における有給ってお飾りみたいな感じだった気がします。
アメリカは11月、12月はホリデーシーズンと呼ばれ、多くの人が長期休暇を取ります。なのでこの時期にまとめて有休を消化する人が多いようです。
こういう状況なのでプロジェクトの進みは当然亀になります。それを見越してプロジェクトのスケジュールを引かないとえらいことになります。
そうとも言い切れません。
なぜかというと、国民の休日が日本より少ないからです。2020年現在、日本の国民の休日は16日ありますが、※アメリカは8日くらいです。
ポイント
※なぜ”くらい”かというと、アメリカのナショナルホリデーにはランク?があり、独立記念日のようにほぼ100%の会社が休みになるものと、コロンバスデーのように一部の会社しか休みにならないものがあるからです。
なのでその辺を加味すると、日本で有休を半分くらい消化+国民の休日を休む のと同じくらいの休みなるのではないかと思います。
技術レベルってどうなの?
シリコンバレーやサンフランシスコのとがった会社では高いです。そりゃそうです。スタンフォード大とかMITのコンピュータサイエンス学科卒が普通に働いていますからね。
あとそのエリアに限らずアメリカのIT会社はインド系のかたがとても多いです。私の会社にもインド系の同僚がいますがとても優秀です。純粋なエンジニアリングのスピードでは正直勝てません(笑。(彼だけ、私だけだと信じたい)
いいえ。全米すべてのIT会社の水準が高いかというとそういうわけではありません。
日本のエンジニアのレベルでも十分通用します。私自身、よく見積もって下の上くらいのエンジニアでしたが12年も働けています。今ではアメリカ人の部下もいます。
なので一部のとがった会社は別として、8割がたの会社は日本のレベルとほぼ変わらないと考えてよいと思います。
エンジニアとして成長できるの?
これは自分次第としか言えません。アメリカに来ただけで英語が話せるようにならないのと同じで、努力をしなければ何も身につきません。
ただ日本よりもよりエンジニア仕事に集中できると思います。
日本では必要かどうかもわからないミーティングが大量にあったり、誰が読むの?っていうドキュメントをエンジニアが作らされたりしますが、そういうことはほとんどないです。合理的に物事がすすみます。
なので日系の会社様と仕事をするときに大量のドキュメントを求められて、うっ となるときがあります。(と思っていること秘密です)
アメリカにSIerという業種がない(もしくは非常に少ない)というのが大きいと思います。SIerの仕事って顧客の要件を聞いて基本設計書や詳細設計書を書いて、仕様変更があったらドキュメントに反映して、、というのを毎プロジェクトごとにやる必要があります。そりゃドキュメントを書く仕事も増えるってもんです。
アメリカは自社のサービスを売り物にしていることが多いため、そういう意味ではそのプロダクトについて一度ドキュメントを書いてしまえばおしまいです。その後の追加があっても毎プロジェクトごとにドキュメントを書き起こす日本のSIer仕事の比ではないです。
同僚ってどうなの?
IT会社に限って言うと日系の会社だと日本人が多いです。理由は簡単で、日本式の仕事の仕方を理解してくれるからです。
日本にいるとなかなか気づかないですが、日本では当たり前にみんなが感じてくれること、動いてくれることもアメリカでは明言しなければいけないケースも多々あります。
たとえば、アメリカにおいてはジョブディスクリプションというのが非常に重要です。いわゆる職務範囲です。
どこの会社でも入社をする時に、「この仕事をするという条件でこのお給料であなたを雇います」という契約を交わします。これは契約書なので、書かれている”この仕事”以外は極論やる必要はないのです。
実際にわたしがアメリカ人部下にいわれて面食らったのは下記のような言葉です。
彼らの行っていることは正論です。正論ですが、プロジェクトを進めていくうえでこれらの思考をもたれていると非常につらいです。何も毎日2時間はサービス残業しろと言っているわけではありません。(それはマネジメントの怠慢です。)
「データベーススペシャリストで入社したからシステム結合テストを手伝うことはできません!(きりっ)」 と言われたら _| ̄|○ となりませんか。
その点、日本人は意図をフレキシブルにくみ取ってくれることが多いです。なので必然的に日本人が多くなっていくのではないかと思います。
もちろん外国人でもそのあたりを理解してれる人はいます。現に先日入社したアメリカ人はERPコンサルタントで入社したけど、プロジェクトがないのでヘルプデスクチームのマネージャーをやってくれと言ったら二つ返事でOKでした。
こういう人って強いですよね。とくに彼はアメリカ人で英語が母国語、アメリカ人マーケットに営業を仕掛けるのはこれほど心強い味方はいません。
使い勝手が良い=>会社が重宝する⇒手放さない⇒給料が上がる
クレバーです。
社外の交流ってどうなの?
Meetupという集まりが非常にたくさんあります。Meetupとは同業種や、同じ目的を持つ人同士が集まって意見交換をする場です。
特にテック系のMeetupはカジュアルなものが多く、Brewery (ビアガーデンみたいなもの)に集まってちょっと話そうぜ 的なノリで開催されています。Meetupに来る人はやりたいことや知りたいことがはっきりしている人が多く、日本の交流会で多い「名刺交換だけしにきました」という人はほとんどいません。
日本だとどこどこの会社に勤めていて という肩書きが枕詞に来ますが、アメリカのMeetupで大切なのは 何をやっているか、これから何をしようとしているか それだけです。あなたがGoogleで働いていようが、ゴールドマンサックスで働いていようが関係ありません。
アメリカではメインの仕事のほかに、自分で会社を持っているという人結構います。私の友人で弁護士資格もっているけど、音楽関係のグッズ販売会社を経営していいる人がいます。
日本ではあまり見かけないですが、実はこの弁護士+自営 パターンて結構多いですね。なので、何をやっているか、何をしようとしているか という会話が当然のように飛び交うのだと思います。
このようにMeetupでごく自然にいろいろなかたと知り合う機会あります。
転職ってどうなの?
しやすいです。ことエンジニアという職種に限れば日本も転職しやすいですよね。
違うのはアメリカの雇用関係は非常にドライだというところです。例えば、ある会社で半年で5000万円のプロジェクトを受注したとします。するとその会社はそれに向けて 年俸1000万円でプログラマ歴5年以上のフロントエンドエンジニア募集 なんていうリクルートメントを始めます。
めでたく採用されると、約束通り年俸1000万円を12分割したお給料を毎月もらいながら仕事が始まります。そして半年がたち、めでたくシステムローンチ、プロジェクト完了となりました。
何が起きるかというと、そのプロジェクトのために雇ったエンジニアを一斉解雇します。
年俸1000万は1000万円もらえる保証ではありません。年にしたらそれだけの額になりますということなのです。
なので解雇されたらまた仕事を探す旅に出る必要があります。
ポイント
アメリカの米系企業では割と簡単に解雇(レイオフ)になります。それは失業手当の申請が簡単かつ、受給することへの心理的ハードルが非常に低いからだと思います。
日本で失業手当をもらっていると言うとネガティブに聞こえますが、アメリカで失業手当(Unemployment benefit) を受給していると言ってもネガティブにはとられないです。特に現在(2020年10月)はコロナの影響でレイオフされる人がとても多いため、あ、君もね みたいな感じです。
もらえる失業手当はだいたい直前の仕事でもらっていた給与の45%くらいです。複数の仕事を持ってるとこの割合も変わると思いますが、自分の周りではこのくらいの数値でした。そして仕事を失ってから1年間、上限金額までの範囲で毎月もらえます。詳細は機会があれば書きますね。
このドライさが高い給与の理由でもあります。会社は仕事があるときだけ必要な人材を雇えばいいだけですから、無駄なコストがかからないのです。いらない社員のためにお金を垂れ流す必要がない=必要な社員にその分のお金ががプールされる という単純な構図です。
ということでエンジニア人材市場は非常に速い速度で回っています。感覚では、同じ会社に1年いたら”一人前”、3年いたら”ベテラン”、5年いたら”まだいたの?”、10年いたら”その会社と心中するんだね”っていう感じです。ただし、これは米系会社に限ります。
日系企業は逆にほとんど流れていない印象があります。日本語話せる人はそのアドバンテージを手放したくない、かつ、やはり日本人に囲まれているので精神的な安心感もあるのだと思います。
そして、米系飛び込む勇気・英語力がある人からどんどんいなくなります。そうでない人は10年選手になっていきます。
就労ビザってどうなの?
日本人がアメリカでエンジニアとして働くときに必要なビザ(就労許可)はほぼこの3つのうちいづれかです。
必要なビザの種類
- H1ビザ
- E1ビザ
- グリーンカード
※以下、私が認識している情報です。ビザのプロではないので参考程度にご認識頂ければと思います。
E1ビザは本社が日本に存在しその子会社がアメリカにある(日本本社の持ち株比率が50%以上で完全子会社)場合。何度でも更新可能。日本で発給されると5年。アメリカだともう少し少ないはずです。
H1ビザは本社が日本に存在する必要がない。日本にゆかりがあったり、日本人である必要もない。更新はできない。期間は6年。
グリーンカードは特に制限なし(グリーンカードへのアプローチはアメリカ人との婚姻、会社がスポンサーになる、特殊技能 などさまざまなのでケースにより制限あるかもしれません。)
渡米していきなり会社訪問して 「働きたいからH1ビザ出してくれ!出してくれるまで帰らない!」といってもそれは無理です。
おそらく一番スムーズなルートは下記です。
Fビザ(学生ビザ)で大学かカレッジ(短大)に行ってOPT(学生の身分で一定期間就労できる権利)を取得、OPT期間のあと働いた企業でH1,E1ビザを発給してもらう
めでたくビザを発行してもらえたら、その会社で数年働いた後、グリーンカードのスポンサーになってくれないか と会社に持ち掛ける。のがベストですがこれは確率低めです。
転職したくなったら有給使って日本に帰って転職先の会社用のビザを再取得して、めでたく新しい会社で働き始める という感じが良いと思います。
転職先のビザ面接で落とされることも普通にあるので間違っても前職を辞める宣言をしてから進めることのないように!!
グリーンカードはどんな会社でも働くことができるというメリットがありますが、取得にはそれなりに高いハードルを越える必要があり、かつ時間もかかります。特に転職するする予定がなくてE1ビザを持っているならば無理にグリーンカードを取る必要はないと思います。
よくグリーンカードホルダーってビザホルダーより上、というかアメリカで生活する上で有利である ようなイメージを持たれているかたがいますが、そんなことはないです。E1を持っていればほぼグリーンカードと同じように生活ができます。無限に更新可能ですし。
違いと言えば、グリーンカードには会社選択の自由とアメリカ入国の時に観光者用の長蛇の列に並ぶ必要がないくらいでしょうか。
それでもグリーンカードが欲しい。短期間に!確実に! という人はもうアメリカ人と結婚しかないです。
アメリカにおいて愛は何よりも強いです。先に述べた会社スポンサーのグリーンカード発給までにかかる時間が1年半から2年くらいなのに対し、婚姻によるグリーンカード発給は半年から1年くらいです。就労許可証だけなら3か月くらいで来ます。(2020年10月現在)
まとめ
いかがでしょうか。脚色なしに書いたつもりですが、改めて自分で眺めてみると、アメリカでITエンジニアをするのはいいとこどりな気がします。
ポイントとしてはこれってITエンジニアだけが使える特権ということです。
営業、マーケティング、総務、人事などの職種では使えません。日系企業で働くのであればある程度枠はあると思いますが、お金的にも将来的にもメリットがない。私なら日本で上を目指します。
この記事ではソフトウェアエンジニア、プログラマー、ITエンジニアといった言葉を同じ意味で使っていますが、もちろんこれらはさらに細分化できます。
ネットワークエンジニア、データベースエンジニア、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアなど、職種により仕事の見つけやすさや給与の違いがあります。私はフロントエンジニアよりのフルスタックエンジニアなので当記事はその分野の色が強く出ていると思います。
また業種による地域的な特色もあります。西海岸でいうとシリコンバレーはネットワークなどのインフラ系の企業が多く、サンフランシスコはWebサービス系の企業が多いです。東海岸でいうとニューヨークは金融系のIT会社が多い印象です。あと中西部は製造業系ですね。
もし地域的な好みがあるならその辺も下調べしたほうが良いと思います。Webやりたいのに中西部に行っちゃうとちょっと辛いことになりそうです。
アメリカの国土は非常に広く一言で『アメリカで働く』といっても一様ではありません。
でも必ず日本では得られない貴重な体験と実弾(お金)を手に入れることができると思いますよ。
せっかくITエンジニアをやっているなら目の前にあるチャンスは掴んだほうが吉だと思います。あなたにはその権利があるのだから。